レッスンが終わる頃、
「ちょっと話があるんですが。食事でもしながらいいでしょうか?」
南木さんから声がかかる。
講師の沢口先生と生田は1階のロビーまで下りて行きながら「何でしょうね?」と顔を見合わす。
生田はタバコを吸うため喫煙室に滑り込んだ沢口先生の後ろについていく。
「大島さんのことなんだと思うんですが」
沢口先生はタバコを吸いながら言う。
「みんな踊れないんですよ。こわくて。まともな足形もしていないしでたらめでやっているから女性は怖くて仕方ないらしい」
「ああ、やっぱりそうか」
沢口先生がタバコを途中で消すのを見ながら二人は喫煙室を出、コーヒーハウスに向かう。
そこには女性陣が7~8人待っていた。
メニューを見てようやく注文し終わってテーブルにつく。
南木さんから「実は大島さんのことなんですが。転ぶのをみんな怖がっている。来月からクイックが始まるので余計心配しているの」
大島さんとは生田が別のサークルで知り合い声を掛けた。
すんなり来てくれてすぐサークルに入会してくれた。おどりがめちゃくちゃ、という話は以前から聞いていたが、一緒に並んで踊っているのでその様子はわからなかったのだ。
「どうするといっても、初級の方にまわってもらった方がいいのじゃないかと思っている」
生田はそういい、別のクラスを勧めていることを説明した。
「危険な状態」は何もしなければこのままでは続き、いつか事故が起こるかも知れないのだった。
話し合いのすえ、結局沢口先生と生田が来週直接本人に話すことになった。
二人はコーヒーハウスを出た。女性陣は、まだ、話があるらしく残っていた。
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