生田は、週末に時間ができたので、駅前のホールのパーティに出かけてみた。
入場口でお金を払い、左サイドのいつもの席あたりへ行く。
夏の暑い盛りで外は35℃を越えているらしい。
椅子のひとつおきに「ウチワ」が置かれてある。そのウチワを取って座り、シューズを履き替える。右の席は空いている。
そこへちょっと細身の女性が来て
「ここ、いいですか?」
「あっ、どうぞ」
左側の席もカップルできているふたりがやってきた。以前にも来ていたカップルだ。
フリーダンスの時間が始まっていた。ふと入り口あたりを見上げたときYさんを見かけた。
昨日、Yさんから携帯に電話が入っていた。折り返すと
「あの、いろいろお世話になったんですけど、急に入院することになって、、、。
あの、抗ガン剤の治療に入るんで、しばらくサークルをお休みさせて頂きたいんです。髪の毛が抜けて、帽子をかぶって戻ってくるかも知れません。」
「そうかあ。最近はありふれた出来事になってきたよね。ガン治療って。実は私の妻も昨年手術を受けたんですよ。ともかく、了解しました。ほかのメンバーには伝えておきますから、希望を持ってしっかり治療に専念して。頑張って。」
そんな、会話を交わしたばかりだったのだ。
Yさんも私に気づいたようですぐやってきた。
「Sさんもあとで来ますよ。」とおなじサークルの仲間の名前を口にした。
わたしがいるのは想定外だったようで、ふたりは示し合わせてきたようだ。
フリーダンスの時間は結構長くて、隣の女性とも踊ったし、見渡して手持ちぶさたでいる女性を誘っては踊った。すぐ、汗をかいた。ワイシャツの背中がくっついてきていた。
隣席の女性の隣の女性から誘われる。何曲か踊る。
最近になってようやく、少し踊れるようになってきたかなという感じになってきた。
ワルツ、タンゴ、スロー。ルンバ、チャチャチャ、サンバなどなんでも一応こなす。
相手の力量に合わせて、楽しく踊る事を心がけている。
スタンダードは何パターンかのルーティンを用意できるようになってきた。
最近はラテンにも欲が出てきて、いろいろ試したりしている。
トライアルの案内のアナウンスがあった。会場の突き当たりサイドに陣取っているベテラン女性にスロー・フォックストロットをお願いした。
すると、Yさんがやってきて「ワルツ、踊ってくれませんか」という。「いいよ。エントリーしといて」
トライアルの時間。Yさんと踊った。いつもサークルで踊っているルーティンだ。
踊り終えて席に戻る。
「さっき私と踊ったのあの子。同じサークルの人なんですよ。まだ、習い始めて1年なんですよ。すごく勘が良い子で、初めてのステップでもほとんど再現できる。ちょっと天才かな、と思えるくらい。ジャズダンスなんかもやっていたらしいですが。それが、昨日突然電話してきて、『来週からガン治療に入ります』ていうから驚いて。まさか今日来ているとは思わなかった。ラスト・ワルツにならなければいいんですが、、、。」
右隣の女性とことばをかわす。
パーティは終盤のフリーダンスの時間帯、Yさんはまたやって来てこういった。
「今日はありがとうございました。来週、入院しますが頑張ります」
関連参照:
プロ/スロー・フォックストロット・Figure付き動画
スロー・フォックストロット 中級 ステップ
世界チャンピオンのダンスを見よう
●基本的なこと
社交ダンスの基礎知識
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